Private Lesson

第3話 「2年後の再会!!愛、ふたたび!!」


留学先から戻ったウランボルグと再会したアーカンジェルは再び家庭教師としてウランボルグの家を訪れていた。
  「愛してる―――アーカンジェル」
  アーカンジェルは自分が耳まで赤くなっていることを自覚しつつ、アーカンジェルの右手を自らの唇に押し当て、指先を軽く愛撫するウランボルグを窘める。
  「ウル、君は、今が何の時間かわかってるのかな?」
  「――――勉強の時間だな」
  「わかっているなら、これは何かな?」
  アーカンジェルは、さりげなくウランボルグに奪われていた右手を引き戻して、真正面から彼の目を見つめる。愛しい恋人から、愛情表現を止められたウランボルグは、冬の夜空のような黒い目を眇めて不満を漏らす。
  「2年間、アーカンジェルと離れていて、いつも夢の中でしかアーカンジェルに会えなかった。今、こうしてアーカンジェルに触れることが出来てうれしい。アーカンジェルは違うのか?」
  「私が君と再会できて嬉しくないとでも?君に触れられて、こんなに心臓が破裂しそうなほど、ドキドキしているというのに」
  「なら、どうして止める?」
  「私は君の家庭教師として、ここに訪ねて来ている。君の成績は2年前と依然、変化なしだ。私の家庭教師としての力不足でお払い箱になるのは、時間の問題だな」
  アーカンジェルの言葉にウランボルグは気色ばみ、宣言する。
  「アーカンジェルを辞めさせることは俺が許さない。誰がアーカンジェルをお払い箱にすると言うんだ?アーカンジェルが自ら辞めると言っても許さない。俺はアーカンジェル以外の先生は必要ない」
  「ウル、君の気持ちは嬉しいけれど、君の成績が伸びないことは、私の家庭教師としての信用にかかわるんだ」
  「俺の成績が上がればいいんだな?」
  「そうだね、でも無理に急がなくてもいいんだ。焦らないで確実に成績を伸ばしてくれればいい」
  「わかった、早く成績を上げるようにがんばる」
  ようやくやる気になった小さな恋人に、アーカンジェルは微笑んで、発破をかける。
  「そうだね、もし次の成績表で、すべての教科で評価5をとれたなら、ご褒美をあげよう」
  「――――すべての教科、か?」
  ウランボルグは眉間にしわを寄せて、考え込んでいる。黙り込んでしまったウランボルグを見て、アーカンジェルは酷な注文をしてしまったと反省する。
  「ウル、やっぱり、今のは無かったことに――――」
  ウランボルグの唇が、アーカンジェルから発言撤回の言葉を遮る。
  アーカンジェルはうろたえる。先ほど窘めた指先の愛撫よりタチが悪い。2年前に比べ二人の身長差は頭半分にまで縮まった。ウランボルグの肩幅は広くなり腕も指も太くなって、全体的にたくましくなった。スキンシップ程度なら止められるが、真摯に迫られると振りほどく自信がなくなってきている。
  恋人の柔らかな唇をつかの間、楽しんだウランボルグは、アーカンジェルが彼を振り解こうとする直前に自ら離れる。
  「アーカンジェル、次の成績表、すべての教科で評価5をとる。誓約する」
  「いや、だから、そんな急に、成績は伸びない…と」
  「俺はアーカンジェルが側にいてくれるだけで幸せになれる。なにも欲しくない。アーカンジェルに再会できた。それだけでいい。何も奪ったりしないし、決して傷つけない。ただ愛している。見返りはいらないが、愛するアーカンジェルから褒美がもらえるというのなら、どんな無理も厭わない」
  ウランボルグは2年前にも誓った誓約の言葉で、アーカンジェルの前言撤回を封じ込める。ウランボルグは嘘はつかない、誓約した以上、必ずその誓約を守るだろう。そのことを充分に知っているアーカンジェルだったが、誓約を守るために恋人が無理をすることは耐え難い。ウランボルグに約束させる。
  「ウル、決して無理はしないと約束して欲しい、いいね?」
  「判った。約束する」
  「もし、すべての教科で評価5でなくても、私は君を怒ったりしないから」
  自分を気遣うアーカンジェルの言葉は、ウランボルグの負けん気に火をつける。
  「アーカンジェルは俺をもっと信用してほしい。すべての教科で評価5をとったら…アーカンジェルから貰いたい褒美がある」
  「ウルは何か欲しいものがあるのか?」
  ウランボルグの願望を思いつかないらしい鈍感な誓約者の言葉に、ウランボルグは頭を痛める。
  「アーカンジェル、俺が欲しいのは―――いや、今はまだ言わない。結果を出してから改めて言うことにする」
  「別に今、無理には聞かないけれど」
  不思議そうに首をかしげつつアーカンジェルは、俄然やる気になったウランボルグを見て素直に喜んでいる。
  そして数ヶ月後、アーカンジェルはこの時の発言を後悔することになる。

 


 

<次回予告>
ウランボルグの成績表が返ってきた。その結果を見たアーカンジェルは?
そして、ウランボルグはアーカンジェルに爆弾発言を落とす。
次回「決戦は金曜日!!(サブタイトル:ドキドキを止められない)」お楽しみに!!


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