Private Lesson

第2話 「運命(お約束)の出会い!」


案内された部屋を一通り眺め、アーカンジェルは呟いた。  「意外に、綺麗にしているな…」
  調度品を含め黒&白のモノトーンカラーで統一されており、落ち着いた部屋に見える。書斎机の上には、大きな花瓶に美しい白百合の花が生けられており、本棚には、『精霊魔法大全集』・『知って得する憑依魔法の裏技』など、中学生が読むには難解な本が整理整頓され並べられている。
  咲き誇る花の香りに引き寄せられるように机に近づき、アーカンジェルが白百合の一つを手にしようとした時、背後から誰何の声がかかった。
  「おまえ、誰だ?何故、俺の部屋にいる?」
  振り向いたアーカンジェルの視線の先には、ドアの前に立ち、強く鋭い視線で彼を睨む少年がいた。黒の学ランに身を包む少年の目尻がややつ上がりぎみの大きな目は、冬の夜空のように深い黒。少年のまっすぐに見返す眼差しの強さにたじろいだアーカンジェルの表情を見て、少年は睨んでいた視線を少し和らげた。
  「おまえ、名は?」
  ぶしつけな言葉ではあるが、ここは彼の部屋であり、自分が彼の部屋の侵入者であることは間違いない。くせっ毛の黒髪を後ろで一つに束ね、自分より頭一つ半低い身長の少年に対し、アーカンジェルはにっこり笑って答える。
  「私は、君の家庭教師として呼ばれた者だが、聞いてなかったのかな?」
  思い当たる節があったらしい少年は、俯いて 「そうか、今日だったのか…」等と小声でつぶやいている。硬い声音で重ねて問う。
  「おまえ、名はなんという?」
  「他人に名前を尋ねるときは、自分から名乗るのが礼儀だと教わらなかったか、少年」
  「ウランボルグ」
  「アーカンジェルだ。今日から君の家庭教師をさせてもらう」
  「アーカンジェルは女か?」
  アーカンジェルは、真顔であまりにも意表をつく問いを発した少年に対し、怒ることも忘れて唖然とする。
  「面と向かって尋ねられたのは、これが初めてだ。同じ家庭教師なら、綺麗な女性にしてもらったほうが、君も勉強のやり甲斐があったのかな?」
  「今まで、何人か、美しいと思う女と出会ったが、アーカンジェルはもっと美しいと思う。だから、女よりも綺麗だと思うアーカンジェルに教えてもらうなら、やり甲斐はありそうだな。」
  アーカンジェルは脱力しつつ、憮然とした面持ちで少年を見下ろす。
  「うれしくはないが、一応ほめ言葉と解釈して礼は言っておこう。そうだ、君に一つ尋ねたいことがある。ウランボルグ、君が生徒会長になった経緯が知りたい」
  「俺が生徒会長になったのは――――」
 即座に答えかけたウランボルグだったが、何を思ったか、唐突に言葉を切ってアーカンジェルを見つめる。鋭い眼光が消える。 笑ったのだと気づくまで、数瞬を要する。
 「――――そのうち、わかる」
  子供らしい笑顔ではなかった。ほのかに微笑んだ彼は、慈愛とさえ呼べるような優しい表情でアーカンジェルを見つめる。少年の笑顔に虚をつかれ、彼が質問に答えるつもりのないのを見てとったアーカンジェルは、それ以上の追求をしなかった。

 


 <次回予告>
無愛想な教え子ウランボルグの笑顔に、内心ドキドキしはじめたアーカンジェル。
教え子のウランボルグには多くの謎が隠されていた。
いつしかアーカンジェルは、ウランボルグから無償の愛のラブラブ攻勢に陥落する。
しかし、愛を誓いあったのもつかの間、清い交際のまま、ウランボルグは留学先に旅立つのであった(笑)。次回、「2年後の再会!!愛、ふたたび!!(サブタイトル:ドキドキが止まらない)」お楽しみに!!

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