Secret Magic

ある朝のことである。神聖統合軍では週頭に恒例の朝議が開かれようとしていた。
「ん、あぁぁぁああ〜。毎度のことだが、朝の会議ってのはつれぇなー。せめて昼すぎにしてくんねぇか?」
欠伸をしながら、会議の部屋に入ってきたドウマをクローディアが軽く嗜める。
「もう、ドウマったら、いっつもギリギリにしか来ないんだから。将軍なんだから、もう少し早めに席についてよね。みんな待ってるんだから」
「そうは言うがな、一応、遅刻はしてねぇんだからいいじゃないか。ん? おい、みんなって言うが、肝心のアークがまだ来てねぇじゃねぇか?」
「アークはいいのよ」
「なんでだ? 神聖統合軍の総帥の遅刻は良くて、遅刻ギリギリの俺の出席に文句を言うのは変じゃねーか?」
「最近のアークってば、働きすぎで、なんだか疲れてるみたいじゃない?」
クローディアの言葉にドウマも頷く。
「ああ、そうだな。アークは何事にも手を抜かねぇしな」
「少しでもアークに睡眠時間をとってもらえたらと思って、今朝の会議は、いつもの時間の2時間後にするってアークに伝えたのよ」
「なるほど。それでアークがいねぇのは判った。しかし、だったら、俺たちも2時間後に会議ってことでいいじゃねぇか」
「だめよ、今日はたくさんの議題があるんですからね。ちょっとでもアークの負担を軽くするためにも、私たちだけで先に決められることは、決めちゃったほうがいいからに決まってるじゃない」
「ああ、まあディアの言うとおりだな」
俺もゆっくり寝ていたいのに・・・という文句が口からこぼれそうになるのを我慢し、ドウマは会議を始める旨を宣言した。


「なぁ、そろそろアークが来てもいい頃じゃないのか?」
部下の手前、ひそひそと耳打ちするドウマにクローディアも頷いた。
「もう40分過ぎてるわね。アークは時間を守る人なのに」
アーカンジェルに伝えていた会議開始時間から、すでに40分すぎていたが、アーカンジェルは一向に現れない。
さすがに会議に出席している面々にも、総帥であるアーカンジェルが現れないことに首をひねる姿がチラホラ見えている。
「ねぇ、ドウマ、ちょっとここで一旦会議を中断したらどうかしら」
議題が一つ解決したばかりで、中断にはキリのいいタイミングだったため、クローディアの提案を受けて、ドウマは会議の休憩を伝え、席を立ち上った。
「ディア、ちょっくら、アークの部屋へ行ってくるわ・・・」
「私も一緒に行くわ」
時間に厳しいアーカンジェルが来ないことに、不安を感じていた二人は会議室を後にし、早足でアーカンジェルの私室に向かった。


コンコン・・・
「アーク?起きてる?」
クローディアが控えめにアーカンジェルの部屋のドアをノックし、声をかけるが、中からは何の返事も聞こえてこなかった。
「ディア、こういうときは、もっと大きな声で呼びかけるもんだぜ?」
普段、ディアにたたき起こされることの多いドウマは、ここぞとばかりにニヤリと笑いながら、ドアを叩く。
ドンドンドン・・・
「起きてっかー?アーク?もうすぐ昼になっちまうぜー!」
それでなくともドウマの声は大きいのだが、アーカンジェルの返事はない。
「おっかしーなぁ、いくらなんでも、これで起きねーってことはねぇと思うんだが」
「そうね」
クローディアが首を傾げつつドアのノブを廻すと、カギはかかっておらず、ドアが開いた。
「開いてるわ、ドウマ」
「無用心なやつだな」
「普通はカギはかけるわよね?」
「ああ、まあそうだな。ちょっと待て、ディア」
先に部屋に入ろうとするクローディアをドウマが止める。
「どうしたの?」
「俺が先に行く」
「どうして?」
「何かヤバイかもしれん」
「ドウマじゃあるまいし、大丈夫よ」
「どういう意味だ、それは?」
ドウマの疑問に、クローディアはにっこりと笑って答える。
「深い意味はないわ」
「オ、オイ。俺はなー、やましいことは全くしてねぇぞ」
「私は別にドウマがやましいことしてるなんて全然思ってないわよ?」
「じゃあ、どういう意味だよ?」
聞き捨てならないクローディアの言葉にドウマも、ついムキになる。
「だって、ドウマは眠りが深いじゃない」
「まぁな、それが何なんだ?」
「だからね、ドウマは眠っちゃうと何が起こっても、ずっと眠ってられるだろうけど、アークはそうじゃないでしょ?」
「確かにアークは眠りが浅いようだがな。しかしなぁ、俺も、いつでも眠りが深いってわけじゃないんだぜ?」
「そう?」
「ああ、俺の眠りが深いのは、ディアの隣で寝てる時だけだ」
安心して眠れるのは自分のそばに居る時だけと、さりげなく伝える恋人の言葉にディアは耳まで赤くなる。
「もう、ドウマったら、恥ずかしいじゃない・・・」
照れて赤くなっているだろう顔をドウマに見られまいと、クローディアは部屋の奥にあるアーカンジェルのベッドに近づいた。


「アーク? 寝てるの?」
クローディアの覗きこんだベッドには、アーカンジェルが穏やかに眠っていた。
ドウマが心配していたような、侵入者の気配もなかった。アーカンジェルは腰のあたりまでシーツをかけ、胸のあたりで両手を組んだまま、まっすぐな姿勢で眠っている。
「寝相いいのな?アークのやつ」
クローディアの呼びかけにも全く反応せずに静かに眠るアーカンジェルを見て、ドウマが呟く言葉に、クローディアはクスクス笑う。
「ドウマは寝相良くないもんね」
「おい、アーク!起きろよ、もう昼になっちまうぜ」
さすがに耳元でドウマの大きな声に起こされれば、どんなに飲んだくれて寝ている下級兵士であっても起きるのが常であるのだが、アーカンジェルの瞼はピクリとも動かなかった。
「まさか、死んでるんじゃないだろうな?」
不吉な言葉をブツブツはきながら、ドウマは右手をアークの口元に寄せて彼の呼吸を確かめる。
「やっぱ、寝てるだけだよな」
クローディアがアーカンジェルの肩を軽くゆすってみる。
「ねぇ、起きて!アーク!」
小さな物音でも、ましてや人の気配にも聡いアーカンジェルが、肩をゆすっても起きないとなると、かなりまずい状況である。
「おい!アーク!いい加減に目を覚ましやがれ!」
ドウマが小さくアーカンジェルの左頬をペチペチと叩いてみるが、やはり目を開ける気配がない。
「ねぇ、ドウマ」
腕をちょんちょんとつつくクローディアに、ドウマは振り返る。
「これってヤバイ気がするんだけど」
「これは、かなりマズイな」
二人同時に発せられた言葉は、全く同じ意味を示していた。
「なぁ、ディア、人を眠らせる魔法ってあるのか?」
「たぶん、あると思うわ」
「なぁ、これって、その眠りの魔法でもかけられたんじゃねぇの?」
「ドウマもそう思う?」
「ああ」
「でも、アーカンジェルが簡単に他人から魔法をかけられるなんて信じられないのよ」
「それもそうだな。アークに魔法をかけられそうなヤツは・・・」
ドウマとクローディアの頭の中に、思い当たる人物が約1名浮かぶが、互いに頭を
振って否定する。
「まさか・・・な」
「まさか・・・ね」

カタン・・・

背後に突然の物音を聞いたドウマとクローディアは、互いに視線をあわせ、軽く頷き、警戒心を顕わに自らの剣に手をかけ、後ろを振り返った。
「よぉーっ!兄弟っ!ひっさしぶりぃー!」
二人が拍子抜けするほどの明るい挨拶で、窓から顔を覗かせたのは炎烈王セファイドだった。
「え、炎烈王?どうなさったんですか?」
ドウマのうろたえた問いかけに、セファイドはニンマリとした笑みを返す。
「よっ!お花ちゃんも元気そうだねぇ? それに綺麗になったじゃん?」
綺麗になったという賛辞の言葉に赤くなったクローディアだが、礼を言っているような場合ではなかった。
「どうしてウルじゃないんですか?」
「ひ、ひどいわー。せっかく現世に戻ってきたのにぃー。せめて会いたかったですぅーとか、一言くらい言ってくれてもいいじゃん!冷たいわー、クスン」
再会を喜んでくれるだろうと、明るく挨拶したセファイドも、二人の第一声にガックシと肩を落とすふりをする。
「い、今はそれどころじゃないんです!アークが!アークが大変なんですっ!」
「ベッピンさんがどうかしたのか?」
切羽詰まったようなクローディアの様子に、セファイドも真剣な表情で仔細を尋ねる。
ドウマから経緯を聞いたセファイドは、ポンと手を打って破顔した。
「んじゃあ、ベッピンさんの眠りの魔法を解けばいいわけね?」
「解けるんですか?炎烈王?」
ドウマの驚く顔を見て、ニヤリと笑ったセファイドは胸をはって答える。
「たぶんな」
「たぶんってどういうこと?」
クローディアの問いに、まあまあと笑ってセファイドは、眠るアーカンジェルの横に腰掛けた。
「うーん、やっぱ、ベッピンさんは眠ってても綺麗だねぇ、ニャハハハ」
赤猫の笑みを浮かべ、セファイドは眠るアーカンジェルの唇に静かにキスを落とす。
「な、何してんですかぁー!炎烈王ーっ!」
「もうっ!最低ーっ!男ってサイテー!」
ドウマとクローディアの苦情を背に、セファイドはピクリとも動かないアーカンジェルを確認し、長いキスを中断した。
「うーん、反応ない相手に、キスしても面白くねー」
悪びれないセファイドの態度に、クローディアは強く抗議する。
「もうっ!信じられないっ!いくら、アークが眠ったままだからって、ヒドイっ!この人でなしっ!強姦魔っ!」
「おい、ディア。いくらなんでも強姦魔ってのは言いすぎじゃあ」
ドウマの言葉も頭に血が上ったクローディアには聞こえていない。
「まあ、確かにオレってば、人じゃなくってー、ドラゴンだしー。だから人でなしってのは、当たってるっちゃあ、当たってるんだけどさぁ。でも強姦魔ってのは、ちと厳しいなぁー。だってさー。眠っている姫が王子様のキスで目を覚ますってのは、基本中の基本でしょ?」
「誰が姫なのよ!?」
「誰ってベッピンさんでしょ?」
「で、誰が王子様って?」
「んー。オレ、これでも幻獣王だったしぃー。オレが王子様ってのもありかなー?って、違ってたみたいね、ニャハハハ」
「それでアークにキスしたわけですか」
セファイドの言葉に殴りかかろうとするクローディアを背後から止めながら、脱力したドウマが尋ねる。
「ベッピンさんがオレを殴らないことで、狸寝入りじゃあないってのも確認できたしな。それにベッピンさんに魔法をかけたヤツもわかった」
軽い口調だったセファイドが真剣な表情になるのを見て、クローディアとドウマは初めてセファイドの真意を理解する。
「誰なんですか?」
異口同音で尋ねる二人にセファイドは、逡巡した後に呟いた。
「間違いなく、魔道王だろう」
ドウマとクローディアの頭の中で「やっぱり」という言葉がぐるぐると回っていた。
「ってことで、相談がある。兄弟」
「何でしょう?」
「この眠りの魔法は魔道王にしか、解き方はわからないだろう。オレが、ちょっと魔道王にナシつけてくる。オレがここに戻るには最低でも10日かかる可能性があるんだが、その間のベッピンさんの体力が問題なんだが」
人間、何も食べずに10日間というのはヤバイということを心配してのセファイドの言葉に、クローディアがドウマに代わって答える。
「大丈夫です、炎烈王。回復魔法があります。お願いです。アークを助けてください」
「うん、子猫ちゃんに頼まれなくっても、ウチのチビ助がオレに早く魔道王のとこへ行けってうるさいから、行きますよ。それに・・・」
「それに、何?」
「眠ったままのベッピンさんにキスするより、起きてるベッピンさんにキスしたいじゃん?」
正直に答えたセファイドに、またクローディアの怒りのボルテージが急激にアップする。
「男ってサイテーっ!もう、信じられなーいっ!」
ポカポカとセファイドの胸をたたくクローディアを引き剥がして、ドウマはセファイドに懇願する。
「炎烈王。すぐに魔道王のところへ行っていただけますか?申し訳ありませんが、今はあなたが頼りです。よろしくお願いします。お帰りをお待ちしてますので」
「んじゃあ、行ってくるわ。ベッピンさんに目が覚めたら、オレがよろしく言っていたと伝えてくれ。白バラちゃんも元気でな!」
ニヤリと笑って翼を広げ、飛び立つセファイドを見送りつつ、クローディアはドウマに尋ねる。
「ねぇ、ドウマ。炎烈王はまた戻ってくるのに、どうして?」
「わかんねぇのか?」
「あ・・・」
「今度ここに戻ってくるときは、きっと」
「そう、そうよね」
きっといつかまた会えるだろう、偉大なる過去の幻獣王との再会を信じて、ドウマとクローディアはいつまでもセファイドの飛び去った空を見上げていた。


神聖統合軍ではクローディアとドウマの機転により「アーカンジェルは教皇との急な接見のため、福縞を留守にしている」ことになっており、長期の総帥不在をごまかしていた。
「そろそろかしら?」
「ああ、もう、まもなくだろう」
眠ったままのアーカンジェルを横目でチラリと見て、ドウマとクローディアは、二人して、ずっと窓から遠く空を眺めている。
今日がセファイドが魔道王の元へ飛び立って、ちょうど10日になる。
「あ、ドウマ、あ、あれ!あれ!見える?」
「お、おう。あれだろう、間違いねぇ」
遠く遠くの空に見える小さな黒い点が、こちらに近づいてきている。
そして急速に近づく黒い大きな翼。
「ウルー!早く早く!」
「待ってたぜー」
クローディアとドウマの呼びかけに、コクッと頷いたウランボルグは、一直線にアーカンジェルの部屋のバルコニーに舞い降りた。
勝手知ったるアーカンジェルの部屋。ためらいなく、ウランボルグはアーカンジェルのベッドに近づき、ドウマとクローディアの聞き慣れない呪文を唱える。

                        

そしてアーカンジェルの唇に一瞬だけ自分の唇を重ね、すぐに離れてアーカンジェルの顔を覗きこむ。
アーカンジェルの長い睫がピクリと動き、そっと瞼が開く。
「アーカンジェル・・・」
目の前で自分の名を呼ぶのはウル?
「ウル?」
にっこりと微笑むウランボルグを見て、アーカンジェルは眉をひそめる。
「夢だな・・・」
そう呟いたアーカンジェルはシーツを引き上げ、頭までシーツの中に隠してしまう。
目を覚ましたアーカンジェルのそっけない反応にショックを隠しきれないウランボルグ。
「アーカンジェル、顔を見せて欲しい」
ボソッと呟いた声に、シーツをひきかぶったアークはピクリと動く。
「アーカンジェル、起きてくれないか?」
この懐かしい声、ずっと聞きたくても聞くことが叶わなかった声、この声は。
「ウル?本当に?」
瞳の下までシーツを下げて、そっと目を開けるアーカンジェル。
「本当だ。今、アーカンジェルの目の前にいる。夢じゃない」
目の前に映るのは、今度は心配そうな表情のウランボルグ。
「ウル!ウランボルグ!」
すぐに上半身を起こしアーカンジェルは、誰もが見とれるであろう笑顔をウランボルグに向ける。
「会いたかったよ。ウル、夢じゃないんだね?」
「おはよう、アーカンジェル。オレも会いたかった。愛している、アーカンジェル」
二人の世界をつくっているウランボルグとアーカンジェルに、クローディアとドウマが遠慮がちに声をかける。
「アーク、気分はどう?大丈夫?」
「良かったな、アーク。一時はどうなるかとヒヤヒヤしたぜ」
キョトンとした表情でドウマとクローディアの言葉を聞いていたアーカンジェルは、慌てて謝罪の言葉を口にする。
「あ?あ!すまない、会議の時間だったな。どうやら私は寝過ごしていたようだ。今、何時なんだ?」
アーカンジェルの言葉に唖然とした二人は、おなかを抱えて笑い出す。
「ア、アーク・・・さすがだわ・・・・」
「ほんっとーに・・・クククク」
何故二人が笑っているのか、訳がわからないアーカンジェルにウランボルグが経緯を説明する。
「ということは、私はもう10日も眠っていたのか?」
「ああ」
10日間眠っていたという事実に、アーカンジェルは愕然とする。
「私に眠りの魔法をかけたのは魔道王だったのか?」
「覚えてないのか?」
ウランボルグの問いに、アーカンジェルは10日前のことを反芻する。
「夢の中に魔道王が出てきて・・・」
「うん?」
「私にプレゼントがあると」
「それで?」
アーカンジェルの言葉にウランボルグが頷く。
「いらないと断ったんだが、遠慮するなと言われて」
「ああ」
「魔道王が連れてきたのが君だった」
「そうか・・・」
アーカンジェルの話にドウマもクローディアも納得する。
プレゼントがウランボルグでは、アーカンジェルは断らないし、断ることは出来ない。
「さすがに、魔道王ね。ツボを心得てるわ」
クローディアの言葉にアーカンジェルは赤面する。
「でも、なんでプレゼントなんだ?」
ドウマの当然の質問に、アーカンジェルは笑って答えた。
「ドウマ、今日は私の生まれた日なんだ」
「ってことは何か?ヤツは今日ウル坊がここに来ることを見越して魔法をかけたってことか?とんでもねぇヤツだぜ、ったく」
「おかげで、夢ではなく、本当にウランボルグに会うことが出来た。ドウマたちには、本当に迷惑をかけてすまないと思っているが、私は少し魔道王に感謝したい」
「へーいへい、そうでしょうとも。うんじゃあ、お邪魔な俺たちは、そろそろ退散するとすっかー」
「そうね、ああ、そうそう、アーク。炎烈王があなたによろしくって」
ドウマとクローディアはにっこり笑ってアーカンジェルの部屋を出て行った。
残されたのは勿論、アーカンジェルとウランボルグの二人きり。
「アーカンジェル・・・愛している。キスしていいか?」
眠ったままのアーカンジェルにキスしたあいつと一緒にされたくはないというウランボルグのささやかな意地が垣間見える。
そんなこととは露知らないアーカンジェルは、有無を言わさずにキスすることの多いウランボルグなのに珍しいことだと思いつつ、赤くなりながらも、静かに首を縦にふる。そしてそっと腕をウランボルグの両肩にまわし、瞳を閉じた。
穏やかで優しいキスがアーカンジェルの唇に訪れる。
「誕生日おめでとう、アーカンジェル」
「ありがとう、ウル」
「アーカンジェルに断られなくて、嬉しかった」
「何のことだい?」
「魔道王からのプレゼントだ」
「君を魔道王に渡すわけにはいかない。いや、ちがうな。君を誰にも渡すつもりはないからね」
「オレも同じだ。アーカンジェルは誰にも渡さない。いつか炎烈王や雷牙王も越えてみせる」
炎烈王にライバル意識を燃やすウランボルグがアーカンジェルは内心可愛いくって仕方ない。
「ウル、今の君でも私にとっては無敵なんだけどね」
「愛している、アーカンジェル」
「私も愛しているよ、ウランボルグ」
久しぶりの逢瀬に恋人たちの睦言はいつまでも尽きることはないのであった。











アーカンジェルの眠りの魔法の事件は、いくつかの謎を残している。

なぜ、ウランボルグではなく憑依魔法によるセファイドが陽界にやってきたのか?

本当にアーカンジェルの誕生日を魔道王が知っていたのか?

魔道王のプレゼントというが、実は魔道王がアウロラに会いたいがため、ウランボルグをおびき寄せるようと眠りの魔法をアーカンジェルにかけたのではないのか?                                                                                                         等など



そして謎は謎のまま・・・解明されることはなかった




                                                               おしまい




                                                             ack




















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